高校受験で身につけたいのは、合格する力だけではない
30秒で読むまとめ
高校受験で身につけたいのは、入試問題を解いて合格する力だけではない。
先延ばし、雑さ、間違いを放置する癖など、自分の弱点を知り、対処する練習でもある。
悪い癖を完全になくせなくても、それが出たときに立て直す方法や、弱点を補える武器を持ってほしい。
高校受験の目的は、高校へ合格することである。
それは間違いない。
志望校に合格するために、必要な内申を取る。
入試問題を解けるようにする。
苦手教科を補い、得意教科を伸ばす。
受験指導として、まず結果を目指すのは当然である。
ただ、長く生徒を見ていると、高校受験を通して身につけてほしいものは、それだけではないと感じる。
自分の悪い癖を見つけ、それをどうにかする方法を知ること。
こちらの方が、高校入学後や、その先の人生では重要になるかもしれない。
高校受験では、普段の悪い癖が表に出る
普段の学校生活では、多少やるべきことを後回しにしても、何とかなることがある。
宿題を提出日の朝に終わらせる。
小テストの直前だけ覚える。
定期テストの数日前になってから、慌てて勉強を始める。
分からない問題は答えを写し、提出物だけ完成させる。
それでも、目の前の課題を一応乗り切ることはできる。
しかし、高校受験では範囲が広くなる。
一日で覚えられる量ではない。
一度習っただけでは定着しない。
分からないところを放置すれば、その先の問題も解けなくなる。
そのため、普段は目立たなかった本人の癖が、はっきり表に出てくる。
・面倒なことを後回しにする
・分からないまま先へ進む
・答えを見て、分かったつもりになる
・間違えても原因を確認しない
・一度できると、もう大丈夫だと思う
・計画を立てても、その通りに動かない
こうした癖は、高校受験が始まったから突然生まれたものではない。
以前からあったものが、受験というまとまった課題の中でごまかせなくなっただけである。
「勉強できない」の原因は、学力だけではない
問題が解けないとき、原因をすべて「頭が悪い」「勉強が苦手」で済ませてはいけない。
同じ「できない」でも、原因はさまざまである。
その前の単元が分かっていない。
問題文や用語の意味を理解していない。
教わっていないから、自分では考えられないと思っている。
そもそも考えることを面倒だと感じ、途中で思考を止めている。
練習量が足りていない。
できるようになりたいという気持ちが弱い。
一つひとつ原因は違う。
原因が違えば、必要な対応も変わる。
前の単元が分かっていないなら、戻ってやり直す。
日本語が分からないなら、用語や問題文の意味を確認する。
練習不足なら、十分な量を繰り返す。
考える前に諦めているなら、どこまで分かっているかを言葉にさせる。
「できない」という結果を見るのではなく、なぜできないのかを本人と一緒に探す。
高校受験は、その練習をする機会でもある。
悪い癖を完全になくす必要はない
本人の悪い癖を見つけたからといって、それを完全になくせるとは限らない。
面倒くさがりな人が、何でもすぐに行動できる人間へ変わる。
忘れっぽい人が、二度と忘れ物をしなくなる。
雑になりやすい人が、いつでも細かく正確に取り組める。
そこまで人間が簡単に変わるなら、誰も苦労しない。
大人でも、面倒なことは後回しにする。
考えることが多すぎれば、頭が回らなくなる。
疲れていれば、雑になる。
問題は、悪い癖があることそのものではない。
自分にその癖があることを知らず、何度も同じ失敗を繰り返すことである。
自分は提出物を忘れやすい。
テスト前になるまで動けない。
一度できると、練習をやめてしまう。
分からないと、考える前に答えを見てしまう。
それを自覚できれば、対策を作ることができる。
癖が出たときに立て直す方法を持つ
忘れやすいなら、記憶力だけに頼らない。
その場でメモをする。
提出物を一か所にまとめる。
締切より前の日を、自分の締切にする。
後回しにしやすいなら、やる気が出るのを待たない。
塾へ来たら最初に取り組む。
始める時間を決める。
一度に全部やろうとせず、最初の一ページだけ始める。
雑になりやすいなら、最後に見直すだけでは足りない。
一問ごとに符号や単位を確認する。
間違えた箇所を自分で説明する。
答えが合ったかどうかではなく、正確に解けたかまで確認する。
自分一人では動けないなら、誰かに管理してもらうことも一つの方法である。
自分でできないことを、何でも自力でやろうとする必要はない。
弱点をなくせないなら、弱点が出ても困らない仕組みを作ればよい。
これも一つの力である。
自分を助ける武器を持つ
悪い癖を抑えるだけでなく、自分の強みを武器として持つことも必要である。
計算が速く正確である。
英単語を覚えることが得意である。
毎日少しずつ続けることができる。
人に説明することで理解が深まる。
質問することに抵抗がない。
一度決めたことは、最後まで取り組める。
そうした力が一つあれば、苦手な部分を補うことができる。
たとえば、理解に時間がかかっても、毎日継続できるなら最後には追いつける。
暗記が得意ではなくても、正確な計算力があれば数学では戦える。
自分で計画を立てるのが苦手でも、決められたことを愚直に続けられるなら、それも強みである。
すべてが得意になる必要はない。
自分の弱点が出たときに、それでも前へ進める力を一つずつ作っていく。
高校受験は、その武器を見つける機会になる。
本人は、本人なりに頑張っている
指導をしていて難しいのは、多くの子どもが、子どもなりには頑張っていることである。
全く何もしていないつもりではない。
本人なりには勉強した。
本人なりには提出物を進めた。
本人なりには気をつけた。
だから、
「もっと頑張れ」
と言われても、すでに頑張っているという気持ちになる。
しかし、
本人なりに頑張っていることと、必要な結果に届く努力ができていることは別である。
本人の努力を否定すればよいわけではない。
一方で、
「頑張ったから、それで十分」
と言うだけでも、本人は困る。
今の頑張りで足りないなら、何が足りないのか。
量なのか。
方法なのか。
継続なのか。
正確さなのか。
そこを具体的に伝える必要がある。
本人が、自分の努力を客観的に判断することは難しい。
だから、周囲の大人が一緒に確認し、必要な行動へ直していく。
入試が楽になっても、この練習は必要である
高校入試は、以前より早く終わりやすくなっている。
高校によっては、以前ほど厳しい受験勉強をしなくても入学できる。
それ自体が悪いわけではない。
一時期だけ限界まで勉強し、心や身体を壊す必要もない。
ただ、入試の負担が軽くなったことで、
自分の弱点と向き合う機会までなくしてよいわけではない。
期限へ向けて計画する。
うまくいかなければ、原因を考える。
苦手なことを避けずに練習する。
面倒でも、必要なことを終わらせる。
自分だけではできないなら、助けを求める。
こうした経験は、高校へ進んでも、大学へ進んでも、仕事を始めても必要になる。
高校受験がそのきっかけにならないのであれば、学校や塾の側が、別の形でその機会を作らなければならない。
合格したあとにも残る力を
入試問題の解き方は、高校受験が終われば使わなくなるものもある。
覚えた知識も、使わなければ忘れる。
しかし、
自分は何を後回しにしやすいのか。
どこで雑になりやすいのか。
分からなくなったときに、どう立て直すのか。
自分一人で難しいときに、誰へ助けを求めるのか。
自分には、どのような武器があるのか。
そうしたことを知っていれば、高校受験が終わったあとにも使える。
高校受験で身につけたいのは、合格する力だけではない。自分の扱い方を知る力である。
自分の悪い癖を完全になくす必要はない。
その癖をコントロールする方法を持つ。
癖が出ても、立て直せるようにする。
そして、弱点があっても前へ進める武器を見つける。
瀬谷松栄塾では、高校へ合格することだけでなく、そうした力を一緒に探し、身につけてもらうことも受験指導の一部だと考えている。
生徒からすれば、
「オッサンの話、長いな」
「また同じことを言っている」
と思われていることも多いでしょう。
それでも、老害と言われない程度に、必要なことは言い続けたいと思っています。
